桜を掘って、ブラジルへ行こう! 5
男が桜の下に戻ると、いつものように子供が穴を掘っていた。なぜだかその光景に男はほっとして、一体何にほっとしたのか夜になるまで悩んだ。 朝靄を切り裂くような薄紅の花弁が舞い落ちる。桜に背を預けて寝ていた男はふと近くから地獄 …
男が桜の下に戻ると、いつものように子供が穴を掘っていた。なぜだかその光景に男はほっとして、一体何にほっとしたのか夜になるまで悩んだ。 朝靄を切り裂くような薄紅の花弁が舞い落ちる。桜に背を預けて寝ていた男はふと近くから地獄 …
男は他の浮浪者たちの言葉を背中で聞き流しながら桜の元に急ぐ。桜、桜だ。すべての終わりは桜だった。男には昔妻がいた。と言っても結婚生活はほとんど破綻していたと言っても良く、長年連れ添った情で妻が男を養っていたに過ぎない。男 …
日も暮れかけ、しだれた桜に街頭の明かりがぽつぽつと照らし、幻想的な風景を生み出す。映画の一シーンのように舞い落ちた花弁が男の肩を濡らす……だが男はそんなものに目もくれることもなく鬱陶しそうに払いのけ、蛇口で土にまみれた服 …
子供はなぜか毎日桜の根元を掘りにやってきた。男が頑として場所をどかないからかその横の土を掘り返す。といっても所詮子供の力なのでスコップは土の上を撫でるように滑る。手で砂を払うのとなんら変わりはしない。どうせ子供のやること …
桜の下に死体を埋めると血を吸って花弁が赤く染まる、というのは嘘らしい。男の脳裏にそんなことがよぎったのは、子供が目の前で桜の根元を手に余るくらいの大きなスコップで掘り返していたからだ。「何してんだ、てめえ!」男は手に持っ …
最初、小さな小さな一本の木しかなかったねこの頭の上は、今ではりっぱなもりになっていました。そうしてたくさんの動物たちもあつまってきました。動物たちはみんなねこのことを口々にほめて、いろいろなものをほしがりました。その言葉 …
ある日、ねこの頭の上に小さな小さな木が生えました。ねこは水がきらいだったので、おふろに入らなかったからです。ねこの頭についたどろにぐうぜん種が落ちて、それが生えてきてしまったのでした。「なんてことだ。ぼくのきれいな頭にへ …